PCR検査と抗原検査はどう違うの?
本日、2020年5月13日に中央社会保険医療協議会(中医協)は、新型コロナウイルス感染症を短い時間で検査する事ができる「抗原検査」を公的保険の適用対象(保険適応)とすることを承認しました。
医師が必要と判断して検査を行った場合は、特例で患者の自己負担はありません。
抗原検査って何?
ウイルスや菌などの病原体がヒトのカラダの中に侵入してきたとき、ヒトの免疫機能により病原体はバラバラに分解されます。このバラバラに分解された病原体の一部、タンパク質を抗原と言います。この抗原物質は、免疫細胞にどんな病原体が侵入してきたかを知らせる情報にもなります。
抗原検査では、このバラバラに分解された病原体の特定のタンパク質を抗体を用いて抗原が存在するか検査します。抗体は特定の物質に結合するタンパク質で、この場合は新型コロナウイルスの抗原に特異的に結合する抗体を用いてます。
PCR検査とどう違うの?
PCR検査は新型コロナウイルスの遺伝情報であるRNAを増幅して、ウイルスの遺伝子があるかを検出します。新型コロナウイルスのPCR検査は、ちょっと特殊でRNAをPCR増幅する必要があるため、まずはウイルスの中にあるRNAを抽出して、それをDNAに変換する必要があります。ウイルスのRNAをDNAに変換したら、PCRで何サイクルも増幅してウイルスの遺伝子があるか調べます。この操作はマイクロリットル(ミリリットルの1/1000)の精密な操作が必要で、感染性のウイルスを取り扱うため、とても集中力が必要な操作になります。そのため、新型コロナウイルス感染症のPCR検査は何時間もかかってしまいます。
一方、抗原検査は鼻の奥から採取した検体に含まれる抗原物質と抗体を反応させるだけですみます。インフルエンザの検査キットと同じて15分から30分程度で検査が終わります。
ここまでだと、
抗原検査の方が早く検査できて良いんじゃないの?
と思う方が多いでしょう。簡単に言うと、PCR検査はDNAを増幅してシグナルを大きくしているので感度が良いですが、抗原検査は、抗原と抗体を反応させて抗原があるかどうかを調べているだけなので、PCR検査よりも感度が悪いです。
従って、感染初期でウイルスが少ない場合は抗原検査では検出できない可能性があります。抗原検査が陰性の場合、本当に陰性なのか、感度が悪くて陰性(偽陰性)なのかがわかりません。そうすると、経過観察やPCRで再検査する必要があり、二度手間になってしまいます。
ただし、PCR検査の検査数が少ない状況なので抗原検査で陽性ならPCR検査をせずに入院・治療開始など、陽性患者を迅速にスクリーニングして治療を開始するのには適しているかもしれません。ここら辺の戦略は厚労省や医師会が今後、検討していくと思われます。
抗原検査の特徴
抗体検査とは違うの?
抗体検査は新型コロナウイルスに対する「抗体」を持っているかなので、ウイルスの抗原物質とは異なります。また、抗体検査はウイルスに対する抗体を持っているかなので、感染しているかどうかを調べるものではありません。ましてや、抗体検査が陰性=感染していないと言うことの証明にはなりません。
下記のニュース記事のように間違った使用例もあるので注意しましょう。