とある博士のパパさん日記

今後は主に出産・育児に備えた記事を書く予定です。

PCR検査を大学の機器や研究者にやらせるべきか?

 一部の専門家やメディアが、大学にあるPCRの検査機器と研究者を活用すれば国内のPCR検査の検体数を大幅に増やせると論じています。

 これは本当でしょうか?

 結論から言うと可能ですがやるべきではありません!

www.asahi.com

 私も大学院生の時や大学で研究員をしていた時にPCRを行っていたので、試薬と検査機器があればPCR検査は行えるでしょう。しかし、ここで言っている大学の研究者とは、

  • 教授や助教など大学に雇われて給与を貰っている教員たちでしょうか?
  • お金を払って大学に勉強を学びにきている学生たちでしょうか?

 もし学生を示しているのであれば、これは大変なげかわしいことだと思います。学生はお金を払って大学に勉強を学びに来ているのに、感染リスクを伴ってPCR検査を手伝わされるのはおかしな話です。また感染性のウイルスの取り扱いに慣れていない大学で、もし学生がPCR検査の検体を介して新型コロナウイルス感染症になったら、親はどんな気持ちになるでしょうか。大学、政府はどう責任を取るのでしょうか。

 PCR検査自体は報道されているように、確かに多くの研究室で学生が行うことも出来るでしょう。そこを活用することで大幅に検体数の処理能力は向上することもできるでしょう。しかし、出来るからと言ってやらせて良い訳ではありません。

 

 では、大学の教授や助教など教員がPCR検査を行えば検体数を増やすことができるかと言われると、答えはおそらくNoです。大学の教員数は学生よりも少なく、PCR検査をできる教員は更に少ないでしょう。従って教員だけでは人員不足を解消することはできないと思われます。また、教員をPCR検査に補填すると言うことは、それだけ研究、日本の科学技術の発展が遅れることに繋がります。

 下記の報道にもあるように、研究機関の研究力ランキングでは東京大学が2016年以降初めてトップ10から陥落しました。このように、本来研究をするべき研究機関にPCR検査を求めた場合、今後の日本の科学技術の発展における大きな足枷になってしまう可能性があります。

 

www.yomiuri.co.jp

 

 また、「研究で使うPCR」と「検査で行うPCR」では求められる技術と精度が異なります。おそらく大学の研究室の学生や研究員の方が技術は優れていると思われます。しかし、人命がかかっている実験ではないので失敗すればやり直せばいいと言うスタンスです。一方、検査センターが行うPCR検査はルーチンワークで技術的には複雑な操作は求められません。しかし、一つ一つの検査結果が人命に関わっており、やり直す事ができないプレッシャーがあるため、高い精度が求められます。

 研究の場合は自分たちで検体を再調製すれば良いですが、検査の場合は失敗したらまた患者さんから検体を採取する必要もあり大変手間で患者さんへの負担が大きくなります。

 これらの違いが、研究と検査におけるPCRの違いになってくるかと思われます。

 

 個人的な感想ですが、大学でPCR検査をするのは医療崩壊よりも酷い状態だと思います。政府や専門家がまともな判断をしてくれるのを祈るばかりです。