とある博士のパパさん日記

今後は主に出産・育児に備えた記事を書く予定です。

7-2-5. 新型コロナウイルス感染症に対するカモスタットメシル酸塩の効果について

 カモスタットメシル酸塩(図1)の承認されている効果は、慢性膵炎における急性症状の緩和術後の逆流性食道炎への使用です(1)。

 

 デンマークオーフス大学は、このカモスタットメシル酸塩の新型コロナウイルスへの効果について臨床試験(フェーズⅠ/Ⅱ)を2020年3月31日に開始しました(2)。臨床試験の一次報告は12月31日、試験終了は2021年5月1日を予定しています。

 

 また、ドイツのハインリッヒハイネ大学は、カモスタットメシル酸塩とヒドロキシクロロキンを併用した新型コロナウイルスへの効果について臨床試験を開始する予定です(3)。

 

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図1. カモスタットメシル酸塩

 

  新型コロナウイルスは、細胞侵入受容体タンパク質のアンジオテンシン変換酵素II(ACE2)を介してヒト細胞に接触して侵入しますが、ACE2とウイルスのスパイクタンパク質の相互作用はウイルス侵入の重要な部位ではありません(図2)。ACE2とスパイクタンパク質の相互作用にはセリンプロテアーゼTMPRSS2が必要になります(4)。カモスタットメシル酸塩は強力なセリンプロテアーゼ阻害剤であり、新型コロナウイルスのヒト細胞内への侵入を防ぐ効果が期待されます。臨床試験の計画書には、新型コロナウイルスの細胞侵入がカモスタットメシル酸塩によって遮断されることと、マウスのモデル実験においてカモスタットメシル酸塩を投与した場合、新型コロナウイルス感染後の死亡率を100%から30-35%に減少させることに成功したと記載されています(2)。

 

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図2. ACE2を介した新型コロナウイルスの感染経路

 

引用文献:

  1. Cell., 2020, 181(2), 271-280, e8.
  2. https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04321096(2020年4月28日閲覧)
  3. カモスタットメシル酸塩(添付文書)
  4. https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04338906(2020年4月28日閲覧)