新型コロナウイルスはどのくらい生存するの?
最近の研究によると、新型コロナウイルス感染症を引き起こすウイルスであるSARS-CoV-2は、空気中および表面上で数時間から数日間生存する事が報告されています(1)。調査では、ウイルスはプラスチック表面で最大72時間、ステンレス鋼表面で48時間、段ボール表面で24時間、銅表面で4時間生存可能であることが確認されました。また、大気中でも3時間検出、生存が確認されました。
プラスチックの表面に付着したウイルスが最大72時間もの間、生存する事が確認され、一部の報道ではこのデータだけを見ていかにも恐ろしいことであるかのように伝えられています。しかし、実際には、72時間後に検出されたウイルス量は最初の0.1%未満で、理論的には感染する可能性はゼロではありませんが、プラスチック表面に付着したウイルスが数日残ってそれが原因で感染することはそうそう起こり得ないと考えられます。
一方で、新型コロナウイルスが空気中で3時間検出されたことの方が興味深いデータだと思われます。新型コロナウイルスの主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。飛沫感染は、感染者の咳やくしゃみ、会話などウイルスを含んだ唾(飛沫)を介して感染します。飛沫は唾、つまり水分を含んでいるため、比重が重く2 mぐらいの短い距離で地面に落ちます。従って、飛沫感染である新型コロナウイルス感染症は2 mほど距離を置くことで感染をある程度防止する事ができます。しかし、エアロゾル化されたウイルスだけの状態だと水分を含まず、軽いため長時間空気中に浮遊し、遠くまで移動します。つまり空気感染(飛沫核感染)になります。空気中で3時間検出されたということは、エアロゾル化された場合、それだけ空気感染する恐れがあると考えられます。
話は変わりますが、これから夏の季節が来てだんだんと暑くなります。気温や天候が新型コロナウイルスの生存に影響するか皆さんも気になるところだと思います。残念ながら熱や寒さが新型コロナウイルスの生存能力に影響するか調査した文献はまだありません。ただ、新型コロナウイルス感染症が世界中で大流行をしていることから、高温多湿な地域や寒い地域でも生存、感染拡大している事がわかります。従って、夏で気温が高くなったからと言ってウイルスの流行がおさまる保証はないと思われます。
引用文献: