とある博士のパパさん日記

今後は主に出産・育児に備えた記事を書く予定です。

抗体検査の正確性「ほぼ100%」、本当?

 日本経済新聞は、2020年5月3日にスイスの抗体検査、米が承認 正確性「ほぼ100%」と言うタイトルの記事を報道ていますが、本当でしょうか?

 

残念ながら、正確性「ほぼ100%」は誤解を招く表記です。

 

 製造販売業者が提供する情報では、抗体検査キット(Elecsys Anti-SARS-CoV-2)の診断精度は、特異度は99.81%(95%CI:99.65-99.91)、感度は100%(95%CI:88.1-100)です(1)。ここまでなら報道記事と内容は同じですが感度はPCR検査で陽性を確認してから14以上たった場合です。PCR検査陽性で0日から6日以内の感度は65.5%(95%CI:56.1-74.1)です。

 つまり、いつやってもほぼ100%正確に判定ができるわけではなく、感染が確認されてから2週間ぐらい経って、十分に抗体ができた時に限って感度がだいたい100%になると言うわけです。

 ほとんどのメディアでそうですが、最近はよく調べもせずに一部の情報だけを抜粋した誤った情報、もしくは誤解を招くような書き方をしているメディアが多いように感じられます。恐らく医療や科学についてあまり知識がないマスコミが、自分たちの質問した都合の良い回答だけを抜粋して、情報の精確性を確かめもせずに報道しているのでしょうか。。。

 因みに、PCR検査陽性で14日以上たった場合の感度は100%と記載されていますが、その横に「95%CI」で88.1%から100%と記載されています。この95%CIは、95%信頼区間100回検査を行えば100回中95回は感度が88.1%から100%の間におさまると言う意味です。従って、感度が88.1%でちょっと悪い時もあれば、非常に稀ですが100回中5回は感度が88.1%よりも悪くなってしまう可能性もあります。しかし、これは全ての検査で言えることです。

 

www.nikkei.com

www.roche.com

 

 上記のスイス製薬企業のニュースリリースでは、「血清検査の特異度は99.8%を超え、感度は100%(PCR確認後14日)です。」としっかり記載されています。日本経済新聞も本文中に「PCR検査で新型コロナウイルス感染症が確認された人に14日後に検査したところ、100%で抗体が確認された」と記載されていますが、記事のタイトルがミスリードさせようとする悪意ある表記で本当に残念です。

 伝言ゲームのように日本メディアを通すことで、途中で情報が削られ、不十分な情報または誤った情報を見た人たちが誤解する。そして、マスクやトイレットペーパー、PCR検査、COVID-19の治療薬のような事態を招くと思うと非常に残念な気持ちです。今、SNSなどで情報が簡単に得られるようになった分、誤った情報もすぐに拡散されてしまう時代になったので、ひとりひとりが必要な情報、正しい情報を淘汰選別する能力が求められるようになったのでしょうか、正直、二度手間でメディアがいる必要性がなくなってきた気がしますが。。。

 その分、各自で正しい、信じられると思った人のSNSやブログをフォローするようになったのでしょうか、競馬や投資などが良い例ですかね。

 

引用文献:

  1. https://diagnostics.roche.com/global/en/products/params/elecsys-anti-sars-cov-2.html(2020年5月4日閲覧)