7-2-2. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する血漿治療の可能性
人との距離を置いて接触を最小限に抑える以外に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する効果的な戦略はまだありませんが、COVID-19に感染した人の回復期の血漿(ヒト抗SARS-CoV-2血漿)が、COVID-19の感染力または感染後の影響を防ぐ1つの有望な手段となるかもしれないことが報告されています(1)。
有望な治療法の一つとして回復期の血漿(CP)または免疫血漿が報告されています。CPはCOVID-19感染者から採取された血漿(ヒト抗SARS-CoV-2血漿)であり、感染後の予防策として感染患者に輸血します(2)。血漿由来のモノクローナル交代などの免疫グロブリン(IgG)由来抗体とは異なり、CPは他のコロナウイルスの流行時、SARS-1またはMERSに対する中和抗体としていくつか成功を収めた抗体療法です。CP由来抗体は、ウイルスの増殖を阻害またはウイルスに直接結合することにより、ウイルスを中和することができると報告されています(3)。
中国の研究者らは、COVID-19に感染した5人の重症患者にヒト抗SARS-CoV-2血漿の輸血を行ったところ、5人中4人の患者で3日以内に体温が正常に戻ったことを報告しています。また、5人のうち3人は退院し、2人も輸血後、37日間は安定した状態であったことを報告しています(4)。だたし、これらの患者はCP治療と併用して抗ウイルス薬やステロイド、メチルプレドニゾロンの投与も受けていました。
現在、世界的にもCOVID-19感染後に有効な治療薬はなく、既存の薬で対応している状況です。またCOVID-19の予防のための抗体もなく、新たに抗体を開発するには数ヶ月または年単位の長い時間がかかります。一方、感染後のCP治療は、以前のSARS-1またはMERSの時、今回の中国におけるCOVID-19治療で限定的かつ中程度の成功を収めており、インドでの死亡率を抑制する短期的な解決策として機能する可能性があることと言われています(1)。
引用文献:
- Medical Journal Armed Forces India., 2020.
- Bloch, Evan M., et al., The Journal of Clinical Investigation., 2020.
- Van Erp, Elisabeth A., et al., Frontiers in immunology., 2019, 10.
- Shen, Chenguang, et al., Jama., 2020.