とある博士のパパさん日記

今後は主に出産・育児に備えた記事を書く予定です。

7-2-3. トシリズマブは重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に効果的か?

 アメリカの研究者らによると、COVID-19感染による異常な宿主免疫応答と炎症性サイトカインの急上昇(サイトカイニンストーム症)によって引き起こされた肺胞滲出液の増加が肺胞ガス交換を妨げ、重症なCOVID-19患者を死に追いやっていることが示唆されています(1)。また、中国の研究者らは、病原性T細胞と炎症性単球が大量のインターロイキン6(IL-6)によって炎症性サイトカイニンの急上昇が誘発されることを確認し、IL-6経路を標的とするモノクローナル抗体が炎症性サイトカイニンの急上昇を抑制する可能性があることを報告しています(2)。

 中国の研究者らは、IL-6受容体を遮断するトシリズマブ治療が体温を急速に正常に戻し、呼吸機能を改善させるなど、劇的な臨床結果を報告しました(2)従って、トシリズマブはCOVID-19の重症患者において炎症性サイトカイニンの急上昇を抑え、死亡率を低下させる効果的な治療法であることを示唆しています

 トシリズマブは、IL-6受容体を標的とした市販されているIL-6遮断抗体であり、関節リウマチの治療において安全性と有効性が既に確立されています。

 中国の病院において、21人の患者に対してトシリズマブ治療を行なった結果、うち20人は治療開始から2週間以内に回復して退院したことを報告しています。残り1人の患者も回復してICU治療室から出ています。これらの有望な臨床結果から、現在、多施設共同大規模臨床試験をさらに開始し、すでに約500人の重症患者がこの方法で治療されています。

 Haiming weiらは、重症のCOVID-19患者の死亡率を減らすために、トシリズマブ治療が推奨されると報告しています(2)。

引用文献:

  1. Semin Immunopathol., 2017, 39, 529-539.
  2. Journal of Translational Medicine., 2020, 18(1), 1-5.